群馬の畳職人ブログ
「畳替えなんてどこも一緒」と思っていませんか?過去30年の価格推移から見る、安い畳の切ない真実。
お世話になります、桐生市の佐藤畳工業です。「一針入魂」本日も職人としてのプライドを胸に、地域の皆様へ畳への熱い想いをお届けいたします。
先日、年配のお客様から見積もり時に、ある一言をいただきました。
「前は1畳1万円くらいで、畳替えができた気がするんだけどなぁ…」
お気持ちは本当によく分かります。ですが、一級技能士として、そこで日本の畳文化を守りたい畳職人として、あえて実直に本音でお伝えさせてください。
「お客様、それは20〜30年前の、日本のい草がまだ元気だった頃のお話です。」
実はこの30年間で、日本の畳を取り巻く環境は180度変わってしまいました。
■ 過去30年の相場推移:価格が変わっていないように見える「からくり」
「昔も今も、畳の表替えって1畳5,000円〜15,000円くらいでしょ?」と思われるかもしれません。確かに、表面上の平均的な施工価格は30年前と大きく上がっていないように見えます。しかし、その中身(実態)は全く違います。
この30年間で、材料である「畳表(ゴザ)」の仕入れ価格は、国産・中国産ともに約2倍以上に高騰しています。さらに、日本のい草農家さんは高齢化やデフレ、そして近年の燃料費、物流費等の高騰の煽りをまともに受け、当時の10分の1以下に激減してしまいました。
本物の国産い草を織れる熊本の農家さんが、ついに公式データでもわずか223戸にまで減り、現場の話では今年はすでに200軒を下回っていると聞いています。それほど畳の故郷が危機的な状況にあり、仕入れの材料費も2倍に跳ね上がっているのに、なぜ今も「激安2,000円〜」という畳替えが存在し、「表替え5,000円〜15,000円」の一般的な相場が変わらないのでしょうか?
つまり、昔の10,000円と今の10,000円の表替えには、品質(畳表のランク)に大きな違いがあります。分かりやすく言えば、昔の10,000円の表替えに使われていたランクの材料を、今の相場に合わせると15,000円以上になります。
では、安さや昔の金額を維持するために、どのような裏側があるのでしょうか?理由はシンプルに2つしかありません。
・材料の品質(ランク)を落として仕入れ値を抑えている
・職人の手間(隙間や凸凹の補修などの技術料)を完全に削り落としている
これが、安さを維持するために品質と職人の手間が限界まで削ぎ落とされている、今の畳業界の歪んだ実態なのです。
■ 「安くて良かった」の代償は、3年後にやってくる
激安の畳替えを頼んで、敷いたその日は「安くて綺麗になって良かった」と満足されると思います。今の中国産や低ランクの畳表は、見た目だけなら一瞬綺麗に見えるように作られているからです。しかし、本当の差が出るのは3年後です。
・低品質な畳表:短い安価ない草をスカスカに織っているため、3年も経つと表面の皮が剥けて服にササクレが付き、全体がどす黒く変色します。
・一定水準以上の国産畳表:使い込むほどに美しい「黄金色(こがにいろ)」に変色し、上品な艶が出て、10年、20年と擦り切れずに長持ちします。
お客様が「安くて良かった」と喜んでいるのは、実は「未来の耐久性と快適性を前借りして、今ケチってしまっただけ」なのかもしれません。早くにボロボロになった畳を見て「やっぱり畳はダメだ、次はフローリングにしよう」と和室が消えていく。これが、私たちが一番危惧している「和室離れ」の引き金になっています。
■ 当店が「生産者」にまで徹底的にこだわる理由
どんなに私がミリ単位の調整をして、隙間なく完璧に仕立てる技術があっても、ベースとなる「材料(畳表)」の質が悪ければ、数年でダメになります。職人の腕と、材料の品質は車の両輪です。
本音を申し上げれば、私も名匠・松田州平氏の畳表にこだわらなければ、もっと安い価格で畳替えをご提供することはいくらでも可能です。表面上の見積もりを安く見せることなど簡単なことなのです。ですが、私はそれを絶対にいたしません。
だからこそ、当店は「熊本県八代産の国産表100%」、それも名匠・松田州平氏をはじめ「どの農家さんが、どんな想いで育てたか」という生産者にまで徹底的にこだわります。良い農家さんのい草は、土作りから違うため、断面を切ると中身(芯)がギッシリ詰まっています。さらに、い草の1本1本を五感で見極めながら、圧倒的な密度で織り上げる職人技が詰まっています。見た目は同じ緑色のゴザに見えるかもしれませんが、中身の詰まり方、織りの執念が、3年後、5年後の圧倒的な寿命の差になります。
■ 結び:10年後の笑顔に責任を持ちたいから
当店が格安店のような「激安価格」を出せないのは、お客様の10年後の笑顔に責任を持ちたいからです。数年でボロボロになる安物を敷いて、お客様に「畳なんてこんなものか」とガッカリされたくないのです。
10年後、20年後に「やっぱり佐藤さんに頼んで良かった。うちの畳は今でも綺麗で気持ちいいよ」と言っていただける本物の畳だけを、今日も頑固に一針一針、執念を込めて仕立てています。
毎日過ごす大切な大切なお部屋だからこそ、予算の許す限り、後悔のない本当に良いものを選んでみませんか?
当店では、予算の枠や建物の環境にとらわれず、お客様の大切な住まいにとって「何が一番の正解か」をプロの目で厳しく見極め、10年後、20年後に心から満足していただける畳替えをご提案しております。どんなに小さな疑問でも、一級技能士の佐藤畳工業へどうぞお気軽にご相談ください。
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